2011年09月30日

個人主義が失ったもの

江名の町並みを眺めて行きました。建物の解体がどんどん進んでいます。解体後の土地をどうするかの計画も無いまま、ただ無料で解体してもらえるからというだけ、たったこれだけの理由で、町中の建物を取り壊そうとしているのです。

江名と中之作の町並みは、東北の太平洋側にある古い港町のなかで唯一奇跡的に壊滅的な津波被害を免れた場所です。それなのに、震災から半年後、人が町を壊しています。たくさんの古い建物が残る町並みに、地元の方は誰も価値を見いだしていませんし、行政も価値のある建物を解体することに対し、これっぽっちの躊躇いもありません。全てを壊し、全てを新しくしたほうが近代的な素晴らしい港町になるとでも思っているのでしょうか?

建築設計の仕事をしていますので、これまで建物解体の現場にはたくさん立ち会ってきました。それら建物解体のタイミングを思い返すと、面白い共通点に気がつきます。「おばあさんが亡くなったので」「祖父の1周忌が過ぎたので」など、建物解体に対し異議を唱えるものが一人でもあるうちは解体できないのです。つまり、建物解体には全員の合意が必要だということです。

ほんの数十年前まで、住宅は「結い」などにより、地域全体で建設するものでした。修繕や建設などの計画も個人で立てることは難しかったでしょう。このような環境の場合、関係者の数が膨大ですので、建物解体のために全員の合意を得るのは困難になります。時分の順番が来るまで、建物をしっかりメンテナンスして長く住み継がなければなりません。古民家が建設された時代には、長く住み継ぐ遺志というより、簡単に壊せない仕組みが存在したのです。

そうなると、建物には長く使い続けるための知恵が次々と蓄積され始めます。特に地震や台風、洪水などの天災に耐える土地選びの目は、今日以上に優れていました。大型の土木工作機械や、杭打ち機などの建築技術が無い時代ですので当然と言えば当然です。

そんな地に足がついた家づくりでしたが、戦後の高度成長期という大きなうねりの中に巻き込まれていきます。消費を煽るかのように持ち家政策がはじまり、大家族は核家族化していきます。そしてついに、一世帯が一軒の家を各世代毎に建設するのが当たり前になるのです。山を切り開いて造成された個人の土地に、個人の財産で何を建てようと、個人の自由でしょ?かなり身勝手な個人主義の登場です。

行き過ぎた個人主義と核家族化により、解体のための関係者全員の同意の人数は数人にまで減少します。極めて容易に解体できる環境です。建設業界も「どうせ30年で壊す建物」としてつくりますので、長持ちさせるための知恵をどんどん放棄して行きます。

古い建物にはその時代の知恵が残されてあります。特に地震と津波に耐えた建物ですので、それらを後世に伝える重要性は誰の目にも明らかだと思います。さらに、それらの建物の多くは港町の景観をつくる資源でもあります。

それを建物所有者だけの判断で解体してしまっていいのでしょうか?

私は、古い建物を解体するため、その町の風景を守りたいと思う者を説得しなければならない時代ではないかと思っています。今始めないと、先人の知恵が詰まった古い建物が無くなってしまいます。この損失は極めて大きなものになるでしょう。

豊田設計事務所は、江名・中之作地域の町並み保存にこれからも協力していきます。

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追記:
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2011年09月15日

残された町

中之作は福島県いわき市にある小さな港町です。小名浜港のすぐ北に位置し、古い街道に面した細長い町並みと、小さな袋小路の路地で構成されていて、港の端にたつと集落全てが視界に入ります。

なんて小さい港町の風景なんだろう。

小名浜で生まれ育ち、中之作の町中を通り過ぎたことは数えきれない程あるのに、初めて防波堤の端に立って港町を風景として眺めたのは去年のことでした。

899.jpg

ダイエット目的で始めたサイクリングでしたが、自転車の速度だから見える風景や、クルマでは入り込めない路地裏探検など、その魅力に取り憑かれ、すぐに友人を誘い自転車散策の楽しさを共有していました。

こんな小さな町なのに、今回の地震と津波に耐えて残っています。津波の向きや防波堤の配置など幾つかの奇跡的な偶然が重なったことも事実ですが、同じ町にある海を埋め立て造成した集落は壊滅的な状況です。そのすぐ近くに築200年の商家などを含んだ集落が力強く残っています。つまり港より少し高い位置にあるその街道は200年前からその位置にあったはずです。これが当時の防災意識だとしたら、この町は残るべくして残った町なのかも知れません。

震災に耐え半年が経過した今、この町の風景が壊滅的なダメージを受けようとしているのです。

中之作の周囲には津波により大きな被害を受けた地域が連続していて、それらの地域の瓦礫や残された建物の解体処分を行政が無償で行っています。津波の被害を受けた地域でこの制度はとてもありがたいものです。

「今、解体しないともったいない」
不思議な空気が、津波に耐えたこの小さな港町に漂っています。
それぞれの建物所有者に悪意はありません。解体に同意するかしないか、それ以外の選択肢が無い状況なのです。
解体以外の選択肢が無い地域の中にひっそりと残された町。この奇跡の町を襲う悲劇だといえます。

津波と地震によりダメージを受けていますが、まだ使える古い建物が解体さえようとしているのです。ボクたちは港の風景を保存するための団体を立ち上げました。「中之作プロジェクト」です。勢いで定款と印鑑もつくりました。更に、文化庁に活動資金の申請もしました。地域の町づくり協議会を巻き込み、保存のための次の手も検討中です。

どんどん設計の仕事から遠ざかっているように思えるかもしれませんが、実務もしっかりやっています。本当ですって!

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追記:
震災で傾いてしまった建物を壊さないで直す取り組みを、
近日中に3件実施します。
「今、壊したらもったいない」
この町の空気を変えることができたら嬉しいです。

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2011年09月06日

不採択でした

今年の6月末が〆切りの補助申請がありました。かなり時間を割いて密度の濃い書類ができたと浮かれていたのですが、残念ながら不採択でした。

この補助金は2年前に2度申請してどちらも不採択でした。かなり悔しかったので、いわき市の補助を受けていわきの気象条件に合った家づくりのための基礎資料を作成し、モデル住宅も建設し、これでもかってほどの提案書を作成したのですが、ダメでした。ちょっと自信がありましたので、落ち込んでおります。

今月2回めの募集がありますが、これ以上の提案は予算を無視しないとできないんです。潮時かもしれません。

この補助金を待っていたお客様に連絡するのが辛いです。

ちなみに申請したのは、
「平成23年度(第1回)住宅・建築物省CO2先導事業」です。採択プロジェクトの決定についてはこちら
何度見ても載っていません。


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追記:
この後、負けが混みそうな気配がします。
そんなときは、背中を丸めて小さくなるのが基本です。
止まない雨はないのであります。

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